nanashi先生の英語教育ブログ

英語教育を中心に、多様な情報をまとめながら様々な議題論題を提示していきます。なるべく広い範囲で、知識や経験のある方と意見交換したいですね。
機械おたくでもあるので、時折ICT教育についてもボヤきます。
僕は日本での教師経験を経て、現在は英語圏の某国で主にアジア系の留学生に英語を教えています。遠からぬうちに帰国する予定なので、帰国後はまた学校教員に復帰するような気がします。こちらでも英語教授法を養成校で学んだので、その視点からも語ります。

英語ができるようになる条件。

今日はソースもなく、ブログに書くにはボヤキのような記事になってしまうかもしれません。


英語ができる条件。今まで、国内外を問わず、非ネイティブで英語ができる人に共通していたこととは。。。


①きちんと勉強する
そもそも、日本の英語教育で使われている教材はよくできています。教科書、副教材、参考書、問題集、どれを取っても他国のそれと比べて、明らかに洗練されている。内容の精度が高く、かつ学習者がステップアップできるよう、仕組みがしっかりしている。
大学入試までの英語をきちんとマスターすれば、あとは語彙を増やして英語を使う時間そのものを生活の中で確保していけば、英語力はつきます。
「効率のいい勉強法」とか「文法からやるからダメ」とか、そういうのに惹かれる人が最後に行きつくのが海外語学学校。
楽しくて、英語環境で、優秀な先生と充実した設備で、何一つ欠けたることのない完璧な環境で学ぶのが、三単現や現在進行形のような、文法。
そうして3か月と100万円近いコストをかけて、英語力もつかないまま。そう、「やっぱり勉強から逃げてはダメ」と自覚することに、100万円かかるわけです。


②英語が好きor英語が必要
確固たる動機があることも、英語ができる人には共通していますね。英語が好きだから、努力という意識ではなく趣味の一環のような意識で、
楽しんでいることから学び、力を伸ばす人は強いです。また、仕事で必要とか、具体的な将来の展望があって、そこに向けて努力している人も強いですね。


勉強が大事。やる気が大事。平凡すぎてつまらないですか?でもそこから目を背けているから英語ができない人が多くいて、英語教育産業が成り立っています。
いつまでも英語力をつけず、努力せずにお金だけ出し続けてくれるわけですから、いいお客様ですよね。
そこにまっすぐに向かう人がいて、第一線で活躍しているわけです。そんな尊敬すべき方々を、たくさん見てきました。


おっと、この記事を読んだからって、一生懸命勉強したりなんか、しないでくださいね。
アナタが「楽しく、短時間で、やる気も時間もなくてもカンタンに英語力をつける方法」を追い求め続けて、お金を払ってくれているから、英語教育産業が成長し続けているわけですから。
「英語ができないのは日本の英語教育政策が悪くて、教師が無能なせい」と思ってくれていたほうが、教える側は儲かりますので。フシシ。

日本の教育の向かう先 ~誰を見て焦り、誰を目指しているのか~

図録▽学力の国際比較(OECDのPISA調査)


上記リンクはよく「日本人の学力低下」の根拠とされるPISA調査の結果推移です。


         '00年  ’03年 ’06年 ’09年 ’12年
点数 読解力    522点 498点 498点 520点 538点
数学的リテラシー 557点 534点 523点 529点 536点
科学的リテラシー 550点 548点 531点 539点 547点
順位 読解力    8位  14位  15位  8位  4位
数学的リテラシー 1位  6位   10位  9位  7位
科学的リテラシー 2位  2位   6位   5位  4位


この学力調査は15歳の児童を対象に、3年ごとに行われています。2003年調査結果が、よくゆとり教育の失敗を象徴する学力低下の根拠として引用されるものですね。そして、2012年のものはゆとり見直しの成果とされています。もっとも、そのような学力観は日本の教育政策の時系列や統計の意味をよく理解していない部分もあり、池上彰氏や尾木直樹氏が指摘されています。詳しくはリンク先にあるので、興味ある方はぜひご参照ください。
さて、皆さんは教育先進国というと、どの国を思い浮かべますでしょうか。よくニュースで紹介されるのはフィンランドやオランダ等のヨーロッパ諸国ですね。ところが、その両国よりも日本のほうが学力高いんですよ。学力低下だ日本の終わりだと騒いでいた日本の順位には、いまオランダやスイス等の国がいます。
一方、強いのは中国や韓国、日本などの儒教文化圏ですね。ちなみに中国は全国統一平均ではなく都市ごとの平均となっています。学力トップ3は上海、香港、シンガポールですね。中国と韓国は日本とはくらべものにならない受験戦争大国です。特に中国出身の方は、実際に僕自身の目で見ていても英語上手ですね。人口の母数がケタ違いなので、優秀な人の数も割合はどうあれ実数として多くなるのでしょう。また、農村まで行って全国規模で調査を行えば、平均値は変わってくるはずです。
さて、どこをどのようにテストしても、どうやら学力を上げるには苛烈な受験戦争をして詰め込むことが良いようです。世界一の経済大国であるアメリカが2012年調査で読解力24位、数学36位、科学28位であることを考えると、経済規模と平均学力に相関性はあまりなさそうです。日本が同等の順位に落ちたら、どのように報道されるかは想像に難くありません。アメリカ人から見たら「俺と同じじゃそんなにダメ?」と聞きたくなるでしょう。


【私見】
ロボットやAIで置き換えられない能力を持った人材を育成していくことが今後数十年で大事になってくる。その点では高い能力を持つトップ層が伸びる手法を取り入れるのは必然。ただし、巷で報道されている「学力低下」や「欧米の教育は進んでいて学力も高い」は事実誤認。PISAのテストでも何でも、テストに強いのは詰め込み教育。


いま巷で流行っている「アクティブラーニング」を例にとってみましょう。日本語でアクティブラーニングと検索しても、言葉の意味と、なんとなく良さげで、いま最新の流行なんだという情報は大量に出てきますが、どこの誰が提唱してどのような実践と成果があったのかは全くといっていいほど書かれていません。
active learningで検索すると、
Active learning - Wikipedia, the free encyclopedia
R W Revansさんが提唱したのだと書いてあります。R W Revansさんはイギリス人です。


学力で言えばはるか下に位置する英米の手法を取り入れようとしている以上、ホンネで言えば日本の教育が目指しているのはPISA学力テストの成績アップではないのでしょう。むしろ、単純労働を効率よく行うことは言うに及ばず、近い将来には熟練を要する技術までオートメーション化されてしまうこれからの世界産業経済情勢に備え、リーダーシップと創造性に富んだ競争力ある人材を育てたいというのがホンネかと思われます。ゆとり教育のスタートは「5%のエリートを育成する」という狙いからですが、その考え方はいまだに生きているようです。誤解を恐れず言えば、残り95%はお上の眼中にないわけです。上位5%にとっては、これからの日本の教育はさらに良くなっていくでしょう。優秀であるということは、将来的に社会に貢献する可能性が比較的高いので、その分あらゆる面で優遇されるわけです。


【余談】


さて、95%の普通の人についてのお話を付け加えておこうと思います。今、日本では労働力の需給不均衡が起きています。一部の分野では需要が増えており慢性的に人手不足な一方、成熟した分野では今もって厳しい状況が続いています。そこで政府が「失業なき労働移動」ということで成熟産業から成長産業への転職を促す試みをしています。転職先では、平均して賃金が転職前の7割程度に落ちているそうです。つまり、今人手が足りていないのは往々にして低賃金重労働の業界なのです。まして今後はオートメーション化や外国人労働者の雇用が増えてきますから、95%の普通の人にとってはマトモな雇用が減り、低賃金で働かざるを得なくなってきます。そうでないと企業も国際競争に勝てないからです。国際競争に勝たないと、国自体が不況になり、税収が減れば福祉にもお金が回らなくなります。国家戦略として大事なのは、国際競争の中で日本企業が生き残っていけるような土台作りをすること。そして、上位企業が稼いだお金をきちんと困っている人に再配布することです。
政策として国際競争力向上のためにトップ層優遇に舵を切るのは正しいのですが、95%の普通の人たちにとって今後の日本の社会は機械や外国人労働者との労働市場で雇用を奪い合うことになり、企業有利な買い手市場で低賃金労働しかなくなってくることでしょう。個人目線で見れば、”何か特別に得意なことがある”ということがますます重要になってきます。誰にでもできることはAIや外国人が取って代わるからです。
もしくは需要の多様化という良い側面もあるので、中小零細が起業しやすい仕組みを作れば今までにはなかったようなニッチなニーズに応える企業が現れ、雇用を増やしてくれることでしょう。1社ごとの雇用数が小さくても、そういった小さなビジネスをする人が全国で増えればかなりの雇用創出になるはずです。ニッチな市場ではAIやロボットを開発しようにも採算が合いませんので、簡単に置き換わることはないでしょうしね。
学校現場では、今後必然的に増えてくる勉強についていけない子をどうフォローしていくのか、真剣に考えていかないといけませんね。

国内での最新英語教育実践例



>東京都教育委員会では、児童・生徒が英語を使用する楽しさや必要性を体感でき、英語学習の意欲向上のきっかけ作りとなる環境を整備することを目的として「英語村(仮称)」を開設することとします。


つまり東京版ブリティッシュヒルズを作ろうという話。目的から見るに、短期間の研修活動に参加できる施設のようです。現実的にその短期間で英語力を向上させるのはほぼ不可能ですが、「英語が楽しかった」という体験をさせることで意欲向上を図ろうという話。
この企画、何が面白いかというと、立候補した企業(主に学習塾グループ)の提案です。


別紙2 英語村(仮称)事業審査結果及び審査委員会審査講評|東京都


>さらに、CLIL及び少人数制プログラムを実現・維持するため、事業応募者のこれまでの事業経験を基に、様々なツールを駆使して良質な外国人スタッフを多数安定的に確保する用意があること、スタッフの育成についても、研修の期間や手法を丁寧に検討されていることを評価しました。


このCLILというのは、英語で各教科を学習するイマージョン教育の発展版のようなもので、グループ学習等をベースに論理的思考力を使って活動を行うものです。大きな違いは、イマージョン教育が言語習得に重きを置いているのに対して、CLILは内容に重きを置いているという点です。



YoutubeでCLILと検索すれば、英語ですがたくさんの実践例を動画で見ることができます。アイディアとしては90年代にはあったものですが、近年新しく現場で導入されるようになってきているようです。
こうした新しい指導方法はテストの点数を取るという観点ではさほど効率的ではありません。その点で、本来テストの点数を取らせるビジネスである学習塾に学校が遅れを取っているのは皮肉な現象ですね。競争原理が働いている分、私塾や私立学校のほうが進んでいるのでしょうか。
3日4日CLILの授業を体験したところで、普段からやっていなければ思考力が磨かれるわけではないので、やはり大事なのは普段の授業です。日本の将来を考えれば、より多くの学校で日常的に実践されるようになってくるといいと思います。
グループ学習が多いのでコミュニケーションが苦手な子たちにはツライでしょう。また、思考プロセスに時間を割くので演習は少なくなり、結果的に多くの普通の子や勉強の苦手な子にとっては苦手意識を持ちやすくなってしまうのが構造的課題ですが、別の観点でフォローが必要となってくるでしょう。単純に「宿題出すから家で練習してこい」では普通の子はまずできませんから。
ちなみに、学校もただ黙って手をこまねいているわけではありません。



(各校の実践内容一覧)
平成26年度スーパーグローバルハイスクール指定校の取組について:文部科学省
より詳細なないようも記事の下部でPDFにて参照できます。


> SGHは、社会課題に対する関心や教養、コミュニケーション能力、問題解決力などの国際的素養を身につけ、将来国際的に活躍できるグローバルリーダーを育成することが目的。


とある通り、こちらの取り組みは語学より国際競争力のある人材育成がねらいのようです。とはいえ最優秀に選ばれた学校の1つである渋谷教育学園渋谷高校、偏差値75の超名門で、「現時点で卒業時にCEFRのB1-B2レベルの生徒は7割近い。現状維持以上を目指すと共に、特にボトルネックとなっている「話す力」の向上を目指す。」B1-B2というのは、英検2級、準1級です。7割が2級以上というのは驚異的な数字です。そりゃレベルの高い授業(行うのに生徒の高い学力・思考力が必要となる、という意味で)を行うこともできようというもの。


僕も週に1度は生徒にただテーマを投げかけ、いくつか発問をして自由に生徒同士が意見交換をできるような授業を行っています。文法トレーニングも生徒の英語力向上を見ていて楽しいですが、やはり実際に英語を使う授業のほうが楽しいですね。特に英語力の高い生徒とやると発問をすべて消化できなくなりそうなくらい会話が盛り上がって、僕はほぼ喋りません。あまり喋らない生徒を指名して意見を聞いたり、あいづちを打ったりする程度です。本来、教師はそうしたファシリテーターに徹するほうが理想的ですよね。