nanashi先生の英語教育ブログ

英語教育を中心に、多様な情報をまとめながら様々な議題論題を提示していきます。なるべく広い範囲で、知識や経験のある方と意見交換したいですね。
機械おたくでもあるので、時折ICT教育についてもボヤきます。
僕は日本での教師経験を経て、現在は英語圏の某国で主にアジア系の留学生に英語を教えています。遠からぬうちに帰国する予定なので、帰国後はまた学校教員に復帰するような気がします。こちらでも英語教授法を養成校で学んだので、その視点からも語ります。

国内での最新英語教育実践例



>東京都教育委員会では、児童・生徒が英語を使用する楽しさや必要性を体感でき、英語学習の意欲向上のきっかけ作りとなる環境を整備することを目的として「英語村(仮称)」を開設することとします。


つまり東京版ブリティッシュヒルズを作ろうという話。目的から見るに、短期間の研修活動に参加できる施設のようです。現実的にその短期間で英語力を向上させるのはほぼ不可能ですが、「英語が楽しかった」という体験をさせることで意欲向上を図ろうという話。
この企画、何が面白いかというと、立候補した企業(主に学習塾グループ)の提案です。


別紙2 英語村(仮称)事業審査結果及び審査委員会審査講評|東京都


>さらに、CLIL及び少人数制プログラムを実現・維持するため、事業応募者のこれまでの事業経験を基に、様々なツールを駆使して良質な外国人スタッフを多数安定的に確保する用意があること、スタッフの育成についても、研修の期間や手法を丁寧に検討されていることを評価しました。


このCLILというのは、英語で各教科を学習するイマージョン教育の発展版のようなもので、グループ学習等をベースに論理的思考力を使って活動を行うものです。大きな違いは、イマージョン教育が言語習得に重きを置いているのに対して、CLILは内容に重きを置いているという点です。



YoutubeでCLILと検索すれば、英語ですがたくさんの実践例を動画で見ることができます。アイディアとしては90年代にはあったものですが、近年新しく現場で導入されるようになってきているようです。
こうした新しい指導方法はテストの点数を取るという観点ではさほど効率的ではありません。その点で、本来テストの点数を取らせるビジネスである学習塾に学校が遅れを取っているのは皮肉な現象ですね。競争原理が働いている分、私塾や私立学校のほうが進んでいるのでしょうか。
3日4日CLILの授業を体験したところで、普段からやっていなければ思考力が磨かれるわけではないので、やはり大事なのは普段の授業です。日本の将来を考えれば、より多くの学校で日常的に実践されるようになってくるといいと思います。
グループ学習が多いのでコミュニケーションが苦手な子たちにはツライでしょう。また、思考プロセスに時間を割くので演習は少なくなり、結果的に多くの普通の子や勉強の苦手な子にとっては苦手意識を持ちやすくなってしまうのが構造的課題ですが、別の観点でフォローが必要となってくるでしょう。単純に「宿題出すから家で練習してこい」では普通の子はまずできませんから。
ちなみに、学校もただ黙って手をこまねいているわけではありません。



(各校の実践内容一覧)
平成26年度スーパーグローバルハイスクール指定校の取組について:文部科学省
より詳細なないようも記事の下部でPDFにて参照できます。


> SGHは、社会課題に対する関心や教養、コミュニケーション能力、問題解決力などの国際的素養を身につけ、将来国際的に活躍できるグローバルリーダーを育成することが目的。


とある通り、こちらの取り組みは語学より国際競争力のある人材育成がねらいのようです。とはいえ最優秀に選ばれた学校の1つである渋谷教育学園渋谷高校、偏差値75の超名門で、「現時点で卒業時にCEFRのB1-B2レベルの生徒は7割近い。現状維持以上を目指すと共に、特にボトルネックとなっている「話す力」の向上を目指す。」B1-B2というのは、英検2級、準1級です。7割が2級以上というのは驚異的な数字です。そりゃレベルの高い授業(行うのに生徒の高い学力・思考力が必要となる、という意味で)を行うこともできようというもの。


僕も週に1度は生徒にただテーマを投げかけ、いくつか発問をして自由に生徒同士が意見交換をできるような授業を行っています。文法トレーニングも生徒の英語力向上を見ていて楽しいですが、やはり実際に英語を使う授業のほうが楽しいですね。特に英語力の高い生徒とやると発問をすべて消化できなくなりそうなくらい会話が盛り上がって、僕はほぼ喋りません。あまり喋らない生徒を指名して意見を聞いたり、あいづちを打ったりする程度です。本来、教師はそうしたファシリテーターに徹するほうが理想的ですよね。