nanashi先生の英語教育ブログ

英語教育を中心に、多様な情報をまとめながら様々な議題論題を提示していきます。なるべく広い範囲で、知識や経験のある方と意見交換したいですね。
機械おたくでもあるので、時折ICT教育についてもボヤきます。
僕は日本での教師経験を経て、現在は英語圏の某国で主にアジア系の留学生に英語を教えています。遠からぬうちに帰国する予定なので、帰国後はまた学校教員に復帰するような気がします。こちらでも英語教授法を養成校で学んだので、その視点からも語ります。

英語学習は何から始めるべきか


非常にポピュラーな話題ですね。これから英語を勉強したい人、英語を教えている人、英語を勉強して自信と能力を身に着けた人、様々な意見や疑問があるでしょう。


まだこのブログを始めて3本目の記事ですが、読んでくださっている方々はどう思われますか??


英語教育業界でも様々な意見がありますが、今多くの先生が納得されるのは恐らく


リスニング→スピーキング→リーディング→ライティング


の順でしょう。ネイティブが自然に学ぶ順番ですね。僕からすればこれは自然とそうなることが多いけれど、必ずしもこの順番にこだわる必要はないというか、第二言語(という言い方すらも古い)習得の観点ではそもそも論点がズレています。それはまた後述。


まず、学生を終えた大人が改めて英語を勉強したい場合に何から始めるべきか。
①目的の明確化 ②自分の学習者のタイプを知る
①目的をはっきりさせましょう。ある程度の期間英語を勉強し、英語を身に着けたら何をしたいのか。あるいは何の必要があって英語を勉強するのか。仕事の都合で一定の期限内TOEIC800点取らないといけない人と、アメリカに留学したい人と、外国人の友達がほしい人とで は必要な勉強の方法も期間も、勉強にかけるべき(かけられる)労力も予算もまるで違いますから。
②学習者には大まかに3つのタイプがあると言われています。視覚型、聴覚型、動作型です。詳しくは下記の動画が参考になりますので、併せて見てみてください。必ずしもはっきりと分けられはしませんが、自分がどのタイプなのかを認識することで、自分に合った勉強の仕方が見つけやすくなります。


一般的に大人から子供まで、第一言語でない言葉を学ぶ際にどういった順番に学んでいくことが効率がよいのか。ちなみに、一昔前はESL(第二言語としての英語)/EFL(外国語としての英語)という言い方をしましたが、今はEAL(他の言語としての英語)と呼びます。移民の子供たち等、3つ以上の言葉を学ぶ学習者が増えてきたためです。
どこで英語を勉強しても、英語の勉強の基礎は中学校程度の文法や語彙からはじまります。英語圏にある英語学校でも、初心者はまず基礎的な文法から入ります。「学校の教師が文法から教えるせいで日本人は英語が喋れないんだ!」と思っている方、文法は大事です。前々回も書きましたが、日本の学校の大人数クラスで6~12年間英語を学んだところで、英語を話せるようになるのはごく一部の英語が得意な人だけです。日本人の多数派が英語を話せないのは、ごく自然なことなので誰のせいでもありません。それは僕が学校で9年間水泳を習ったにもかかわらず、バタフライで泳げないのと一緒です。


さて、ある一つの文法項目を学ぶ際に、どのような順序で学べばよいのか。これはむしろ教える側が意識することでもあるのですが、学習者が知っておいても損はありません。
その順序は、よくm.p.f.という言い方をします。すなわち
①meaning(意味や使用場面、文脈)
②pronunciation(発音)
③form(形)
です。日本で英語を学ぶと、だいたいが③→②→①の順になりますね。ここが一番の問題なわけです。まずはその言葉を使う人がどのような場面で、どのような文脈で、どのような感情で何を言わんとしてその言葉を使うのか。それを見たり聞いたり読んだりしてつかむのが一番最初です。次が発音、そしてやっとここで"have + 過去分詞"だのといった形を学ぶわけです。文脈なしに訳語と形だけ学んでも、なかなか理解して使いこなすまでには至りません。
ここまでが授業で言うと導入の部分ですね。塾や学校であれば大なり小なり口頭説明だけで済ませてしまう部分です。
英語を身に着けるには、”理解と練習”が必要です。導入は理解の部分なので、次に練習が必要ですね。練習の際には次のような順序で取り組んでいきます。
restricted practice(制限された練習)→ freer practice(比較的自由度のある練習)
例えば現在完了。
(1)下の( )内の語を適切な形に直しましょう。
   I have ( play ) the piano for 6 years.
(2)あなたが長期間取り組んできたことについて、英語で話してください。
どちらが簡単でしょうか。当然、(1)のような自由度が低く、明確に答えが1つしかない課題のほうが簡単ですね。(2)も同じ現在完了を使って表現できますが、答えが決まっていないので難しいです。まずは自由度の低い練習をある程度繰り返し、身についてきたところで自由な表現の練習をします。そこまで来れれば、その文法項目はもう使いこなせるでしょう。
以上のようなことが英語学習の大まかな手順です。リスニングからか読み書きからか、というのはそもそも問題になりません。学ぶ人がやりやすいようにやれば良いのです。導入部分で場面や文脈を示す際にリスニングを使うことが多いというだけで、学習者にある程度の英語力があるなら新聞記事から導入してもいいわけですから。また、restricted practiceとしては読み書きのほうが目に見えて形に残るので、学ぶ側としても取り組みやすいです。あくまで、いきなり自由に喋れとか自由に書けとか言わなければいいだけの話です。


次に長期的な英語学習の流れについて。まず、目標はどうあれ中学校3年間程度の英語力(英検3級程度)は必要です。幸い、英検そのものは合格基準点が低い(7割程度)ので資格を取るには助かるわけですが、実際英語を使いたいなら英検3級で9割は取りたいところですね。
http://www.eiken.or.jp/eiken/exam/grade_3/solutions.html
英検協会のウェブサイトで無料で受けられるので、興味ある方はぜひ試してみてください。
ただ単に外国人の友達がほしいという人は、英検3級程度の力がついたら勉強はほどほどにして外国人と遊ぶ機会を増やしたほうがいいでしょう。

検定試験や仕事で使うビジネス英語等、明確な目標がある人はその必要に応じた内容をさらに勉強していくといいと思います。ちなみに、仕事で英語を使うならば文法や単語は英検2級程度を9割以上身に着けておきたいところです。あとは基本的に語彙を増やすだけなので、読み書きがメインになってきますね。プレゼンやスピーチが必要なのであれば、それは英語力とは別の技術も必要になってきます。


以上が僕の英語圏での知識や経験を踏まえての「英語を学ぶ手順」についてのお話です。僕もまだ勉強中の身なので、ご指摘ご意見などありましたらコメントお願いします。ぜひざっくばらんに意見交換したいですね。